キック キック トントン
 きっく きっく とんとん

 寒い夜、太郎はうどん屋の前でのっぽの姉さんと、
やせと太っちょのお兄さんの3人を待っていました。
まだか、まだかと手袋をかぶせた小さな手を、
口にあてて眺めていました。口から出した息の白さで
初めて月明かりに気付きました。

 こんなに明るいんだったら自分の影も映るかな

 自分の影を動かして遊んでいる太郎を、やがて
不揃いに長く伸びた三つの影が、優しく重なり合い
ながら包んでいきました。