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- 作者: フランツ・カフカ,Franz Kafka,前田敬作
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 1971/05/04
- メディア: 文庫
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『城』にも『審判』にも共通して言えることなのだけど、権力との闘いにおいてここぞという時に限って、Kさんは女にはしっちまうんだよなー。カフカが恐れていた「女性性」に権力の謎があるのだろうか・・・。
加えて、『城』では、Kさん、助手が二人現れるのだけど、二人をひっつけて一人分で扱おうとする。ドンキホーテがサンチョとの1:1の主従関係だとすると、ここでは、1:1というか、1:1.5というか、ぶれてるんだよなー。このラインの延長上に、『24人のビリー・ミリガン』があるに違いない・・・。
ビールをジョッキに注いでいるのは、若い娘で、フリーダという名前であった。あまり人目を惹かない、小柄な、ブロンドの髪をした娘で、眼に悲しみの色をうかべ、頬はやせこけていたが、その視線だけは、なにかはっとさせるものがあり、独特な高慢さと優越感をたたえていた。Kは、その視線に出会ったとき、自分の一身上のいくつかの運命がすでにこの視線によって決定されてしまったような気がした。彼自身は、この視線によって左右されねばならぬような運命があるとはまったく知らずにいたのだが、この視線は、彼にそのような運命の存在を確信させるだけの力をもっていた。