生は彼方に (ハヤカワepi文庫)

生は彼方に (ハヤカワepi文庫)

・・・。正しいのは彼かそれとも他の者たちか、といったことがそんなに重要だったのだろうか? 重要なのは、彼が彼らと絆を持ったということだ。彼は彼らと意見を異にしたとはいえ、彼らにたいして激しい共感を覚えた。彼はもう彼らの話しを聞いてさえいず、ただひとつのこと、自分は幸福だということしか考えていなかった。彼はたんに母親の子あるいは教室の生徒だけではなくなり、自分が全面的に自分自身になる人間たちの集まりを見つけた。そして、人が全面的に自分自身になるのは、他人たちと交わり合うときからでしかないのだと思った。(ミラン・クンデラ『生は彼方に』)

クンデラの自伝的小説であるとともに、原点。いろいろな意味で
彼のプロトタイプが詰まっている。「存在の耐えられない軽さ」や「不滅」
ほど難しくはなく、こってもないが、やはり、クンデラだ。
プロットの組み立て方などもさることながら、特に第二部の
「あるいはクサヴェル」の部分は、ブラボー。